マイク・ディ・メリオ選手へのEWCインタビュー
FIM世界耐久選手権2022年シーズンを制したF.C.C. TSR Honda Franceのライダーラインナップの一員であるマイク・ディ・メリオ選手(35歳)は、2023年シーズンの王座防衛に向け、チームメイトのジョシュ・フック選手とアラン・テッカー選手と共に奮起している。フランス人ライダーのマイク・ディ・メリオ選手は、我々のインタビューに次のように答えてくれた。
Q:今シーズン、あなたはゼッケンナンバー『1』を背負うホンダマシンでレースに臨むことになったが、それはどれほどの重要さを持っているのか?
「ホンダにとっても、HRCにとっても、ホンダ・フランスにとっても、そして僕にとっても、それはとても重要なことなんだよ。僕がこのチームに加入した時、チームは前シリーズのタイトルを持っていたんだけど、僕はそんな経験したことがなかったんだ。去年はかなり難しいシーズンだったけど、冬の間、チームのみんながたくさん働いてくれたから、今シーズンではもっと戦える力があると思うし、フィーリングも良いんだ。来シーズンも1位をキープできると信じているよ。」
Q:その自信はどこから来るのか?
「昨シーズンでは、エキゾーストシステムに多くの問題を抱えていたんだ。その問題で多くの時間をロスしたから、もし、この問題を解決することができていれば、多くのレースで勝つことができたはずなんだ。今シーズンでは、TSRマフラーを復活させて、さらにチームは、新しいステアリングアームを開発したんだ。日本で高橋巧選手がそれを使用してテストしたけど、すでにラップタイムは過去よりも良くなっているらしいよ。というわけで、チームがマシンに施した改良の成果もあって、いい感じできているんだよ。ルマンでのテストでは、僕たちのレベルがどの程度なのかを確認したいと思っているよ。」
Q:世界タイトル防衛に成功することは、どれほど特別なことなのか?
「僕はもう35歳だから、そろそろキャリアの終わりに近づいてきているんだけど、ホンダでできるだけ多くの勝利を収めて、キャリアの最後をいい形で締めくくりたいと思っているんだ。ホンダとチームのために多くのタイトルを勝ち取りたい。これ以上自分にプレッシャーをかけるつもりはないけど、僕達にはそれができる力が十分あると思っているよ。去年は、1勝もできなかったけど、ワールドチャンピオンになれたから、今シーズンでも『ミスをしないこと、クラッシュしないこと、いいリズムで走ること』がとても重要だと思っている。レースで勝つことが一番重要ではないんだよ。だって、昨年はレースで勝てなかったけど、ワールドチャンピオンになれたからね。最終目標がワールドチャンピオンになることであれば、素晴らしいレースをすることを犠牲にしたほうがいい場合もあるんだよ。この事が一番大事なんだ。」
Q:今シーズン、最強のライバルとなるのは?
「当たり前だけど、SERT、YART、BMWが一番の強敵だと思うけど、新しいチームのKM99や#333(Honda Viltaïs Racing)のことも考えなければならないよね。特にHonda Viltaïs Racingは、ホンダマシンを使用することになったからね。だけど、年々競争が激しくなっているのは確かで、いつでも気は抜けないんだけどね。常に改善策を見つけて、スピードアップする必要があるんだ。鈴鹿は特別なレースということで除外すれば、誰にでもチャンスはあるんだよ。昨シーズンのボルドールの事を考えてみれば、#333は、誰も予想していなかったけど勝ったんだ。EWCは、長いレースだからね。マシントラブルやクラッシュなど、何が起こるかわからないんだ。
Q:今シーズンは、EWCシリーズと並行して、フランス選手権にも参戦しますが、
両方に参戦することのメリットは?「昨年は、他の選手権には参戦していなかったけど、以前は、MotoEに出場していた。スプリントレースに出て、高いレベルを維持することは、とても面白いことだったよ。特に、フランス選手権みたいなスプリントレースに出場できることは、とても幸せなことなんだ。14歳のときに1年だけ出場したことがあるくらいで、もう20年も出ていないんからね。フランス選手権は、僕にとっても、ホンダにとっても、いい経験になると思っているんだ。EWCに向けて体調を整えていきたいんだけど、他の大会から参加しているライダーは皆、レベルが高いことがわかったんだ。僕たちも、そのレベルをキープする必要があるんだ。」
スプリントレースとエンデュランスレースの切り替えは難しいのでは?
「3月26日にルマンでフランス選手権の初レースがあるんだ。2日後にEWCの事前テストに参加する予定だけど、今のところわからない。これは初めての経験だから、どうなることやら…。以前は、フルノーマルのCBRでコーチングを受けたこともあったけど、そのときは5、6周しないと適応できなかったんだ。でも、私たちのマシンは良いから、簡単に適応できるんだ。」
ルマン24時間レースと日程が近いフランス選手権のルマンレースは、どの程度役に立つ?
「有利に働くと思うけど、自分のスタイルに集中しなけれならないし、EWCにだって適応する必要があるんだ。1月からフランス選手権に向けて6日間のテストを行って、初戦の前にまたテストを行う予定だから、以前よりも多くマシンに乗ることができるようになった。それが利点の一つかな。そのほうが自分のスピードにも合っているしね。」
Q:昨年はメカニカルな問題があったということですが、チームメイトのジノ・レイ選手が鈴鹿でクラッシュをしたときは、あなたにとってもジョシュ・フック選手にとってもチームにとっても本当に大変だったのでは?
その時はどれくらい大変だった?「鈴鹿では、特に彼が転倒したコーナーでのパスがとても大変だったんだ。普通にレースをしていると、彼がぶつかったバリアが僕らのすぐ近くにあるとは思わなかったんだ。(事故後)レースをしていて、その場所で外側から何人か抜こうとした時、バリアがとても近かいことに気づいて、そこでコンマ何秒かロスしてしまったんだ。でも、普段はそんなことは考えもしないんだけど。”アラン・テッカーがボルドール24時間レースに来た時は、かなり大変だったと思うよ。だって、彼は僕たちを助けるためにやってきたからね。世界チャンピオンになれる可能性があることは分かっていたけど、それはとても小さな可能性だったんだ。だけど、彼はミスをするわけにはいかなかったんだ。大きなプレッシャーだったと思うよ。ジノが僕たちのために何をしてくれたか知っているからね。彼はスパでとんでもなく素晴らしい仕事をしてくれたんだよ。だから、大変だったけど、世界チャンピオンになれてとても嬉しかったよ。僕たちはただ、『ありがとう。君はこのチャンピオンシップを勝ち取ったチームの一員だよ。』って言うだけなんだ。」
Q:彼の回復が進んでいるのを見るのは、とてもうれしい?
「僕は、毎日、彼のインスタグラムを見ていて、彼がサイクリングをしていたりすると、とてもうれしいんだ。いつか彼がまたバイクに乗れるようになることを願っているよ。レーサーに戻れるかどうかはわからないけど、コースを何周か走ったり、昔好きだったことを楽しむことができれば、それはもう彼にとってとてもいいことだと思うよ。」
Q:アラン・テッカー選手は、その代役としてふさわしかった?
「ああ。チームもアランを昔から知っているしね。彼は過去に何度かミスをしたから、これは2回目のチャンスだと思うんだ。チームは、彼にもう一度チャンスをあげて、そして今、彼はそのチャンスをものにしたんだ。ボルドールでは、とてもいい仕事をしたから、今年もそれを続けないとね。フランス選手権では、彼は僕のチームメイトでライバルでもある。それもいいことだと思うよ。EWCとフランス選手権で、もっと良い関係を作れると思っているよ。」
Q:シーズン初戦を前に、ブガッティ・サーキットは、耐久レースにとってどの程度難しいのか教えて?
「難しいですけど、問題ないよ。僕にとって最悪なのは鈴鹿なんだ。暑いし、S字カーブは素晴らしいけれど、S字でミスると死にそうになるんだ。ル・カステレは、ストレートが長くて大変。ルマンでは、あまりプッシュしすぎないで、いいライディングを続ければ大丈夫だと思うよ。」
Q:4月のルマン24時間レースは日照時間が短く、暗い中でのレースが多くなるが、その点は問題ない?
「夜間で一番嫌なのは、僕は、スティントの間は寝ているんだけど、マネージャーが起こしに来るときかな。視界への適応が必要なだけだね。実は、夜のバイクはとても速くて、パワーもあるんだ。タイヤの剛性も高いし、グリップ力もあるから、楽しいんだ。でも、ルマンは、とてもいいコースで、視界がとてもいいんだよ。それほど難しいことではないんだ。」
Q:レース以外の時間はどのように過ごしている?
「幸いなことに、僕の仕事はライダーだけだから、それに集中することができるんだ。肉体的にはかなり鍛えているよ。バイクやカートにも乗ったりもするし、サーキットでコーチをする日もあるよ。だけど今年は、フランス選手権とEWCのダブルエントリーだから、もっと忙しくなりそうだね。だから、コーチ業をいくつか整理しないといけないね。でも、毎週たくさんトのレーニングしているし、バイクに1、2回乗ったり、カートやサイクリングをしたり、毎日何かしらやっているよ。去年は体重が増えたから、この冬は、EWCのために体重を落とそうと思っているよ。2021年時の体型の方が良かったと思うから、気を付けながら、もっと痩せようと思っているんだ。ダイエットしているんだけど、すでに4、5キロ痩せていて、順調にきているんだ。あと3、4キロは痩せたいね。僕には11歳と7歳の男の子がいるんだけど、彼らも遊び半分でバイクに乗っているんだ。休みの日に僕がトレーニングに行くと、子供たちも一緒についてきてバイク乗ったり、一緒に楽しんでいるよ。」
Q:貴方にとって、バイクレースにおけるヒーローは誰?
「若い頃、僕には大好きなライダーが3人いたんだ。「バレンティーノ・ロッシ、マックス・ビアッジ、ロリス・カピロッシなんだ。ビアッジのスタイル、カピロッシのアグレッシブさ、そしてロッシの戦略性が大好きだったんだ。彼らは僕のドリームライダーだったんだ。」
FIM世界耐久選手権2023年シーズン・レーススケジュール最新版
第1戦(開幕戦):ルマン24時間レース(フランス、ルマン、ブガッティ・サーキット)2023年4月13日〜16日
第2戦:スパ24時間EWCレース(ベルギー、スパ・フランコルシャン・サーキット)2023年6月16日〜18日
第3戦:鈴鹿8時間レース(日本・鈴鹿サーキット)2023年8月4日〜6日
第4戦(最終戦):ボルドール24時間レース(フランス、ポール・リカール・サーキット) 2023年9月14日〜17日
マイク・ディ・メリオ選手について:https://www.fimewc.com/driver/mike-di-meglio/