レース直前解説:もうすぐFIM EWC 2022年シーズンがルマンで開幕
FIM世界耐久選手権2021年シーズンの最終戦が0.070秒差という僅差で決着してから半年、ライダーとマシンの究極の実験場が来週(4月14~17日)、フランスの第45回ルマン24時間レースで再び幕を開ける。
EWC2022年シーズンの開幕戦となるこのレースは、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催されるスパ24時間EWCレース、フランスのポール・リカール・サーキットで開催される100周年記念ボルドール24時間レースとともに、EWC2022年シーズンレーススケジュールにある3つの24時間レースの1つである。
4.185kmのブガッティ・サーキットを使用するルマン24時間レースには、過去のFIM世界耐久選手権で年間チャンピオンとなったライダー13人を含む52台がエントリーし、迫力満載のレースとなることが期待されている。
概要
レース正式名称:FIM世界耐久選手権2022年シーズン第1戦、第45回ルマン24時間レース(45th 24 Heures Motos)
開催日:2022年4月14日-17日
開催場所:フランス、ルマン、ブガッティ・サーキット
コース全長:4.185キロメートル
決勝レース開始時間:4月16日(土)15:00(中央ヨーロッパ夏時間、以下CEST、日本時間:同日22:00)
EWC予選ラップタイムレコード:1分35秒730、Team SRC Kawasaki France(ランディ・ド・プニエ選手)、2017年
EWC決勝レースラップタイムレコード:1分36秒408、Team SRC Kawasaki France(ランディ・ド・プニエ選手)、2017年
新型コロナウイルス感染症による2年間の無観客開催を経て、再びファンに開放されたルマン24時間レースは、勝利すればその名誉と重要なチャンピオンシップポイントを獲得できるなど、4輪レースと同じ雰囲気を持っている。
2021年シーズンでは、ルマン24時間レースは6月中旬に開催され、ルマンのパドックからほど近い場所に拠点を置くYoshimura SERT Motulが優勝し、Yoshimura SERT Motulはそのまま、FIM世界耐久選手権2021年シーズンタイトルをも手にしたのである。
従来の4月開催に戻ったことにより、天候が変わりやすく、日照時間も短く、外気温や路面温度がさらに低くなる可能性があるため、ライダー、チーム、タイヤメーカーが直面する困難も増えることになる。
地元のヒーロー、ルイ・ロッシ選手はこう語る。
「天候は常に問題だね。ルマンでは、良い天気だった日の次の日に急に悪化することもあるんだ。どんな状況にも対応しなければならないんだけど、特に夜の寒さに適応するのが大変なんだよ。でも、それが24時間レースだし、壮大なレースの一部なんだよね。
寒さで体が硬直するから、体力の消耗も激しくて、とても疲れるんだよ。脳と体がちゃんとリンクするように一晩中コントロールしなければならないんだ。そして、日が昇り始めると、レース終了に向けてエネルギーを回復させていくんだ。でも、夜が明けるときは、いつも大変なんだよ。」
「僕はルマン生まれのルマン育ち。ルマンは僕にとって特別なサーキットなんだ。僕はルマンの雰囲気も好きだし、それに一般の観客たちも帰って来るからね。みんなにとっても素晴らしいことだよね。レースが待ち遠しいよ。」
ルマン24時間レースの豆知識
※2022年のルマン24時間レースは第45回大会であり、FIM EWC開幕戦としては2年連続の開催となる。
※新型コロナウイルス感染症による2年間の無観客開催を経て、今シーズン、遂にファンが戻ってくる。
※第1回ルマン24時間レースは、1978年4月22日~23日に開催され、ジャン・クロード・シュマラン選手とクリスチャン・レオン選手がホンダマシンを駆り、優勝に輝いた。
※EWCレーススケジュールにも登場するフランスの24時間クラシックバイクレースであるボルドール24時間レースは、1971-1977年、ルマンで開催されていたが、ルマン24時間レースが発足した1978年以降は、ポール・リカール・サーキットに場所を移して開催された。
※2020年、2021年大会は現地時間14:00スタートだったが、2022年は15:00スタートとなる予定。
ダンロップ・スーパーストック・トロフィーの紹介
2022年から新たに導入されるダンロップ・スーパーストック・トロフィーは、EWCプロモーターのDiscovery Sports Eventsとダンロップ、そして、各EWCレースのプロモーターの共同主催による大会だ。ダンロップがスーパーストック(SST)クラスの単独タイヤサプライヤーに任命されたことを受け、この大会が発足された。
全参加チームには、レース毎に同じ本数のタイヤが割り当てられ、フロントとリアそれぞれ2種類のコンパウンドから選択することができる。また、レース結果に応じて、各チームにタイヤが無償で提供される。例えば、20本のタイヤを割り当てられたチームが、レースで優勝して15本を受け取った場合、5本分の請求書が発行される。
Falcon Racingの一員としてダンロップ・スーパーストック・トロフィーを争うダヴィッド・シュヴァリエ選手は、次のように語っている。
「もちろん、シーズンを通して表彰台に上ることができたら、それは素晴らしいことだと思うよ。そういう夢を見る権利を僕たちは勝ち取ったんだ。このチームに参加しているということが、すでに夢の中にいるようなものだしね。だから一緒に素晴らしいことをやっていけるんだよ。」
ダンロップ・スーパーストック・トロフィーは、FIM・エンデュランス・ワールドカップへの参加資格を持っているチームで争われ、ルマン24時間レース、スパ24時間EWCレース、ボルドール24時間レースで競われる。ダンロップ・インディペンデント・トロフィーは、2021年を最後に廃止されたが、代わりに、フォーミュラEWCクラスとスーパーストッククラスのいずれのクラスにおいても、バイクメーカーのサポートを受けずに参戦するチームは、独自開催される新たな大会、インディペンデント・トロフィーに参加することが可能だ。
ダンロップ・スーパーストック・トロフィー参加チームリスト(ゼッケンナンバー順)
Team 18 Sapeurs Pompiers CMS Motostore, Team 202, BMRT 3D Maxxess Nevers, TRT27 Bazar 2 La Bécane, Team 33 Louit April Moto, JMA Racing – Action Bike, 3ART Best of Bike, RAC 41 ChromeBurner, No Limits Motor Team, National Motos, Players, OG Motorsport by Sarazin, Pitlane Endurance – JP3, Énergie Endurance 91, Team LH Racing, ADSS97, Aviobike, Falcon Racing, Wójcik Racing Team STK
インディペンデント・トロフィー参加チームリスト(ゼッケンナンバー順)。
Tati Team Beringer Racing, Team Bolliger Switzerland, Maco Racing, Team 18 Sapeurs Pompiers CMS Motostore, Team 202, BMRT 3D Maxxess Nevers, TRT27 Bazar 2 La Bécane, Team 33 Louit April Moto, JMA Racing – Action Bike, 3ART Best of Bike, RAC 41 ChromeBurner, No Limits Motor Team, National Motos, Players, Motobox Kremer Racing, OG Motorsport by Sarazin, Wójcik Racing Team, Pitlane Endurance – JP3, Team LRP Poland, Énergie Endurance 91, Team LH Racing, Moto Ain, ADSS97, Aviobike, Falcon Racing, Viltaïs Racing Igol, Wójcik Racing Team STK
2022年大会のルール変更
2022年FIM耐久世界選手権の変更点の一部は、来週にまとめて発表される予定です。
100字でわかるブガッティ・サーキット
ブガッティ・サーキットが1966年9月に全長4.422kmのコースで開幕するよりもずっと以前の1912年9月、ACOは最初のバイクレースを開催している。ブガッティ・サーキットでは、1969年にスタート/フィニッシュラインのあるストレート、ダンロップカーブ、フォードシケインを含むサルト・サーキットの一部とツイスティなインフィールドセクションを使用し、初のオートバイ耐久レースが行われた。2008年から現在の4.185kmのコースレイアウトが使用されるようになった。ブガッティ・サーキットは、EWCの開催会場であると同時に、MotoGPのフランス大会の会場でもある。
ビッグナンバー:33
FIM世界耐久選手権2022年シーズンでは、フォーミュラEWCクラスの14チーム、スーパーストッククラスの19チームの計33チームが参戦を表明している。
ライダー達のコメント
フロリアン・アルト選手、ドイツ(Viltaïs Racing Igol、ヤマハ YZF-R1)
「2022年に向けて、新しいチームメイトのスティーブン・オデンダール選手、エルワン・ニゴン選手、ジェームス・ウェストモアランド選手と新しいラインナップを揃えることができて、本当にうれしく思っているよ。それに、マシンのセットアップ方法やチームに対する思いもほとんど一緒で、とても相性がいいように思うんだ。チームは冬の間、マシンを24時間レース用により快適に、より乗りやすくするために懸命に働いてきてくれた。僕たちはとても落ち着いていて、集中しているし、テストもとても良い感触を得たんだ。
グレッグ・ブラック選手、フランス(Yoshimura SERT Motul、スズキ GSX-R1000)
事前テストの初日は、晴天のドライコンディションだったから、良い調子で走れていたんだよ。レースと同じコンディションで、いいタイムを出すことができたからね。新しいセッティングやマシン開発には満足しているんだ。レースに向けて良い感じだなんだよ。この日唯一、ニュータイヤを履いてクイックラップをする機会があったんだけど、ダンロップカーブとシャペルコーナーの間でハイサイドを起こしてしまった。あっという間の出来事で、そのあと雨が降ってきてしまったんだ。足首に少し痛みがあったから、テスト2日目は、1週間後のレースのために走行せず、回復に努め、体調を整えることにしたんだ。」
ニッコロ・カネパ選手、イタリア(YART Yamaha Official Team EWC、ヤマハ YZF-R1)
「事前テスト初日の午前中の目標は、タイヤとマシンの感覚を取り戻すことだって言っていたんだけど、良いラップタイムが出ていたんだ。ラップタイムを見たときはヘルメットの中で思わずにやけてしまったんだ。自信がついたよ。ブレンボ製の新しいブレーキキャリパーとブレーキシステムを導入したんだ。それに、電子制御システムにもいくつか変更を加えているから、さらにラップタイムを向上させることができると思うよ。」
デビッド・チェカ選手、スペイン(ERC Endurance-Ducati、ドゥカティ パニガーレV4 R)
「ドゥカティは、僕の兄(カルロス)がスーパーバイク選手権で世界タイトルを獲得したメーカーだから、これは僕にとっても大きなチャンスと思っているんだよ。自分にとっても(同じように)素晴らしいことだし、最善を尽くしたいと思っている。ヤマハに移籍した最初の年に世界チャンピオンを獲得できたし、カワサキに移籍した最初の年でも世界チャンピオンになれたから、ドゥカティで(1年目に)世界チャンピオンになれたらこんなに嬉しいことはないよね。それは夢かもしれないけれど、そんな夢を見てもいいよね?すでにチームは、多くのことを学習しているし、僕もこのプロジェクトの一員になれて嬉しいよ。これまでの経験を生かして、チームがさらに躍進できるように、あらゆる面からサポートしていきたいと思っているんだ。思い入れのあるメーカーとの新しい冒険、待ち遠しいよね。」
ジェレミー・ガルノニ選手、フランス(BMW Motorrad World Endurance Team、BMW M1000RR)
「ドライでの走行もあったし、ウェットでの走行もあって、本当に良い2日間のテストだったと思うよ。あらゆるコンディションでマシンを試せるということは24時間レースを考える上でもとても重要なことなんだよ。ウェットコンディションでのマシンの仕上がりはいい感じだし、ドライでも素晴らしいペースを見せている。でも、まだ課題は残っていて、特に、予選で速いラップタイムを記録するには、まだいろいろと試せることが残っているんだよ。全体的には満足しているし、このライダー、チーム、マシンの組み合わせがあれば、十分優勝争いに絡んでいくことはできるからね。あとはレースウイークでもう少し頑張って、ベストを尽くすだけだね。」
エティエンヌ・マッソン選手、フランス(Webike SRC Kawasaki France、カワサキ ZX-10RR)
「事前テストでの主な目的は、マシンのフィーリングを確認することと、チーム全体を知ることが目的だったんだ。ジル・スタフラー監督は耐久レースのスペシャリストだからね。僕は、当日までにはマシンを完璧に仕上げてくれると信じているよ。まだ、改善すべき点はあるけど、ルマン24時間レースには間に合うと思うよ。マシンが調子いいということは、ライダーにとって非常に重要なことだからね。マシンに自信を持って、安全に走ることができなければならないからね。このマシンは快適で、とても満足しているよ。勝利を目指して戦えることも分かっている。チームメンバーはみんな経験豊富だし、乗り方もうまくて、かなり安定しているんだ。これって、マシンのパフォーマンスにも大きなプラスになってくるんだよ。」
ジノ・レイ選手、イギリス(F.C.C. TSR Honda France、ホンダ CBR1000RR-R)
「事前テストでは、電子制御システムやシャシー、コンディションによって異なるコンパウンドのタイヤ・セッティングなど、多くの有意義な作業をチーム全員で行ったんだ。レースペースもとても良いし、安定したペースを目指しているんだ。マシンも良い方向に向かっているようだし、レースが楽しみだよ。」
近年の優勝チーム(ライダー)
2021年:Yoshimura SERT Motul(グレッグ・ブラック選手、ザビエル・シメオン選手、シルバン・ギュントーリ選手)855周
2020年:F.C.C. TSR Honda France(ジョシュ・フック選手、フレディ・フォーレイ選手、マイク・ディ・メリオ選手)816周
2019年:Team SRC Kawasaki France(ジェレミー・ガルノニ選手、デビッド・チェカ選手、エルワン・ニゴン選手)839周
2018年:F.C.C. TSR Honda France(ジョシュ・フック選手、フレディ・フォーレイ選手、アラン・テッカー選手)843周
2017年:GMT94 Yamaha(マイク・ディ・メリオ選手、デビッド・チェカ選手、ニッコロ・カネパ選手)860周
暫定レーススケジュール
FIM EWCの主なレーススケジュールは以下の通りだ(日時はCEST)。
4月14日(木)
9:45-11:45:フリー走行
16:00-16:20:公式予選1回目(ブルーライダー)
16:30-16:50:公式予選1回目(イエローライダー)
17:00-17:20:公式予選1回目(レッドライダー)
17:30-17:50:公式予選1回目(グリーンライダー)
20:30-22:00:夜間練習走行
4月15日(金)
10:20-10:40:公式予選2回目(青ライダー)
10:50-11:10:公式予選2回目(イエローライダー)
11:20-11:40:公式予選2回目(レッドライダー)
11:50-12:10:公式予選2回目(グリーンライダー)
12:45:予選終了後デジタル記者会見
4月16日(土)
9:00-9:45:ウォームアップ走行
15:00:第45回ルマン24時間レース決勝スタート
4月17日(日)
15:00:第45回ルマン24時間レース決勝終了
15:05:表彰式
15:30:レース終了後デジタル記者会見
ライブタイミング
ルマン24時間レース (4月14日-17日):https://www.its-live.net/#/live/ewc/2022
プライベートテスト(4月12日):https://www.its-live.net/#/live/its/2022
最終エントリーリスト
最終的なエントリーリストとFIM EWC2022年シーズンの33レギュラーチームの詳細は、FIMEWC.comで近日中に公開される予定。