レース直前解説:EWCエースライダー達、スパ高速サーキットへの準備は万全
6月2日から5日にかけて、スパ・フランコルシャン・サーキットにおいてEWCライダーとチームにとって大きなチャレンジとなるFIM世界耐久選手権2022年シーズン第2戦「スパ24時間EWCレース」が遂に開催される。
2001年までEWCのメインレースの1戦として開催されていたリエージュ24時間の精神を復活させたスパ24時間EWCレースは、2500万ユーロの投資計画の一環としてEWCのために特別に改良されたコースと、才能あふれるハイレベルな参加者によって現代のレギュラーレースとなることが決まっている。また、同時開催されるその他のレースやアクティビティも充実しており、ファンがコース内外で充実した時間を過ごすことができるため、最高の思い出になることだろう。
2022年のEWCスケジュールに組み込まれている3つの24時間レースのうちの2戦目となるスパ24時間EWCレースは、1周6.985kmと長距離で起伏が激しく、低・中・高速コーナーが混在することが特徴のスパ・フランコルシャン・サーキットで行われ、このサーキットはアルデンヌ森林の中にあるため、天候が変わりやすく、予測不可能なレース展開となると言われている。
スパ24時間EWCレース開催は、数日後に迫っているが、実はその復活計画は5年以上も前から存在していた。そして、スパ24時間EWCレースが開催されるスパ・フランコルシャン・サーキットは、国際モーターサイクリズム連盟(FIM)とベルギーモーターサイクリスト連盟(FMB)の指示により、大幅に改修が行われた。
四輪レースに対応するための必要条件により、いくつかのコーナーでランオフエリアの拡大、いくつかのセクションでセーフティーバリアの再配置、二輪レース専用にスピーカーズコーナーの左コーナーの再調整が行われ、国際自動車連盟(FIA)の承認を受けた。また、インフラ整備も行われ、ラディオンコーナーの頂上付近に専用グランドスタンドが建設された。
スパ24時間EWCレースは、EWC開幕戦のルマン24時間レースに続く第2レースである。グレッグ・ブラック選手、シルバン・ギュントーリ選手、そして、ベルギー人ライダーのザビエル・シメオン選手は、波乱に満ちたルマン24時間レースで、FIM EWCディフェンディングチャンピオンチームであるYoshimura SERT Motulに優勝をもたらした。一方、FIM EWCワールドカップとダンロップ・スーパーストック・トロフィーでは、Team 18 Sapeurs Pompiers CMS Motostoreが優勝に輝き、クラス暫定首位に立っている。EWCのホームラウンドを前にしたザビエル・シメオン選手のコメントはこちら。
FIMグリーンウィークの一環として行われるサステナビリティ活動の一環として、スパ24時間EWCレースは世界中のネットワークで放送され、レース全体の模様はDiscovery Sportsのプラットフォームで放映される予定だ。
概要
レース正式名称:FIM世界耐久選手権2022年シーズン第2戦、スパ24時間EWCレース(24H SPA EWC Motos)
開催日:2022年6月2日-5日
開催場所:ベルギー、スパ・フランコルシャン・サーキット
コース全長:6.985キロメートル
決勝レース開始時間:6月4日(土)13:0013:00(中央ヨーロッパ夏時間、以下CEST、日本時間:同日20:00)
EWC予選ラップタイムレコード: レコードなし
EWC決勝レースラップタイムレコード:レコードなし
*5月17日-18日に行われた2日間の事前テストでは、BMW Motorrad World Endurance Teamのマーカス・ライターバーガー選手が2分20秒344のベストタイムを記録している。
100字でわかるスパ・フランコルシャン・サーキット
かつてEWC年間スケジュールの中でもメインレースの一つであったリエージュ24時間の精神を継承するスパ24時間EWCレースがこのサーキットで開催されることにより、2001年以降、初の国際レベルの二輪レースが開催されることになった。この象徴的なサーキットは、EWCの復活のためにFIMとFMBによって安全面での大幅な改修工事が施された。四輪レースの要件に沿った変更点として、いくつかのコーナーでランオフエリアの拡大、いくつかのセクションでセーフティーバリアの再配置、二輪レース専用にターン9(スピーカーズコーナー)の左コーナーの再調整が行われ、国際自動車連盟(FIA)の承認を受けた。
ルマン24時間レースの豆知識
※スパ・フランコルシャン・サーキットでのEWC開催は、2015年にDiscovery Sports Events(旧Eurosport Events)が統括団体のFIMとの長期契約の一環として選手権プロモーターに就任した直後に検討されていた。
※当初、スパ24時間EWCレースは、2022年6月3日(金)の22:00(CEST)のスタートが予定されていたが、6月4日(土)13:00(CEST)に変更された。
※スパ・フランコルシャン・サーキットは全長6.985kmと、EWCレースの中でも最長距離のサーキットである。
※Discovery Sports Eventsは、スパ・フランコルシャン・サーキットと連携し、MotoGPフランス大会を運営するPHA Claude Michyをスパ24時間EWCレースの総合コーディネートサポーターに任命した。
※EWCがベルギーで開催される2022年は、2020年、2021年と2年連続チャンピオンを獲得しているザビエル・シメオン選手がチャンピオンを獲得した場合、偉大な記録となるハットトリック(3連覇)の時期と重なる。
ダンロップ・スーパーストック・トロフィーの紹介
2022年から新たに導入されるダンロップ・スーパーストック・トロフィーは、EWCプロモーターのDiscovery Sports Eventsとダンロップ、そして、各EWCレースのプロモーターの共同主催による大会だ。ダンロップがスーパーストック(SST)クラスの単独タイヤサプライヤーに任命されたことを受け、この大会が発足された。
全参加チームには、レース毎に同じ本数のタイヤが割り当てられ、フロントとリアそれぞれ2種類のコンパウンドから選択することができる。また、レース結果に応じて、各チームにタイヤが無償で提供される。例えば、20本のタイヤを割り当てられたチームが、レースで優勝して15本を受け取った場合、5本分の請求書が発行される。
ダンロップ・スーパーストック・トロフィーの選手は、ルマン24時間レース、スパ24時間EWCレース、ボルドール24時間レースで争われるFIMエンデュランスワールドカップの参加資格を得ることができる。ダンロップ・インディペンデント・トロフィーは、2021年を最後に廃止されたが、代わりに、フォーミュラEWCクラスとスーパーストッククラスのいずれのクラスにおいても、バイクメーカーのサポートを受けずに参戦するチームは、独自開催される新たな大会、インディペンデント・トロフィーに参加することが可能だ。詳しくはこちら。
スパ24時間EWCレースに出場するFIM耐久ワールドカップ(スーパーストック)チームのうち、EWCプロモーターであるDiscovery Sports Eventsから与えられるダンロップ・スーパーストック・トロフィーへの参加チームは以下の通りだ。
Team 18 Sapeurs Pompiers CMS Motostore、Team 202、BMRT 3D Maxxess Nevers、TRT27 Bazar 2 La Bécane、Team 33 Louit April Moto、JMA Racing – Action Bike, 3ART Best of Bike、RAC 41 ChromeBurner, No Limits Motor Team、National Motos Honda、Players、OG Motorsport by Sarazin、Pitlane Endurance – JP3、Énergie Endurance 91、Team LH Racing、ADSS97、Aviobike、Falcon Racing、Wójcik Racing Team STK
スパ24時間EWCレースでのEWCプロモーターのDiscovery Sports Eventsからインディペンデント・トロフィーに参加するチームは以下の通りだ。
Tati Team Beringer Racing, Team Bolliger Switzerland, Maco Racing, Team 18 Sapeurs Pompiers CMS Motostore, Team 202, BMRT 3D Maxxess Nevers, TRT27 Bazar 2 La Bécane, Team 33 Louit April Moto, JMA Racing – Action Bike, 3ART Best of Bike, RAC 41 ChromeBurner, No Limits Motor Team, National Motos Honda, Players, Motobox Kremer Racing, OG Motorsport by Sarazin, Wójcik Racing Team EWC, Pitlane Endurance – JP3, Team LRP Poland, Énergie Endurance 91, Team LH Racing, Moto Ain, ADSS97, Aviobike, Falcon Racing, Viltaïs Racing Igol, Wójcik Racing Team STK
EWC2022年シーズンの新展開
FIM世界耐久選手権2022年シーズンの変更点の概要は以下の通りだ。
※スパ24時間EWCレースが新たにEWCスケジュールに追加されたことにより、同選手権のシーズンには、24時間レースが3戦開催されることになる。
※ダンロップ・スーパーストック・トロフィーとは、ダンロップとのスーパーストッククラス単独タイヤサプライヤー契約の一環として、スーパーストッククラスに参戦する選手を表彰するものである。
※予選の結果は、最速タイムを記録した2人のライダーの平均タイムに基づく(第4ライダーの結果は考慮されない)。以前は3人のライダーの平均タイムが採用されていた。
※各カテゴリーで最速タイムを記録したチームから108%以内のタイムであることする。
※2022年(移行年)から2031年までのFIM世界耐久選手権およびワールドカップにおいて、Stäubliは、FIM公認燃料クイックチャージャーシステムの単独サプライヤーとなる。2022年では、公認燃料クイックチャージャーシステムの使用が義務付けられていないが、2023年からの同システムの使用義務化に備え、装備を整えたいすべてのチームに販売または貸し出すことが可能である。
ビッグナンバー:19211921年にオートバイのレースがスパ・フランコルシャン・サーキットで初めて開催され、リエージュ24時間は、1973年に開催された。
ライダー達のコメント
マイク・ディ・メリオ選手、フランス(F.C.C. TSR Honda France、ホンダ CBR1000RR-R)
「コースのある部分では雨が降って、ある部分では晴れているなんてこともある特別なコースだからね。コンディションはかなり厳しいんだと思うよ。長いレースにだから、このコースのことをよく知る必要があるんだよ。高速コーナーが多いから、事前によく理解しておく必要があるって言われていたので、去年、コースを学ぶために何度かここでテストを行ったんだ。その数日のテストはとても面白かったよ。きっとレースへの助けになると思うよ。」
ランディ・ド・プニエ選手、フランス(Webike SRC Kawasaki France、カワサキ ZX-10RR)
「もしも、このままスパを走らないで、引退していたらきっと後悔していただろうね。ここに来られて良かったよ。正直言って、ここは世界最高峰のサーキットだと思うよ。EWCのコースとしては完璧だから、いいレースができると思うよ。シケインやヘアピンとか、このサーキットのあらゆる部分が楽しいんだ。冬の間、僕たちはテストをできていなかったから、開幕戦は練習のようなものだったんだ。今回は準備も万全だし、上位陣との差も縮まっているから、僕たちは表彰台を狙いに行くよ。」
チャビ・フォレス選手、スペイン(ERC Endurance-Ducati、ドゥカティ パニガーレV4 R)
「このコースでの初走行をとても楽しみにしていたんだ。だって、みんながいいコースだって口をそろえて言うからね。でも、テスト中、最初の1周でそのことを納得したよ。ヘアピンやハードブレーキングポイントが少なくて、常に流れているような感じなんだ。僕やチームのみんな、そしてマシンも、このコースに合っていると思うよ。オー・ルージュはブラインドコーナーで、マシンの向きを変えなければならない外側が見えないので、簡単なコーナーではないんだ。ルマンに比べると、長いストレートと流れるようなコーナーのおかげで休憩時間が長く、ハードブレーキングポイントも少ないので、体力を温存することができそうだね。でも、長いサーキットだからね。天候も変わりやすいし、厳しいレースになると思うよ。」
マービン・フリッツ選手、ドイツ(YART-Yamaha Official Team EWC、ヤマハ YZF-R1)
「スパは6時間レースで3、4回来ているから、コースのことはよく知っているんだ。僕は、このコースは、世界で最も美しいコースだと思っているよ。高速コーナーが多くて、ストレートとコーナーでスピードを出すためには、毎回、クリッピングポイントを正確にトレースしなければならないから難しいけどね。でも、どんなレースになるのか、今からワクワクしているんだ。もちろん、いつも勝つために戦っているけど、ルマンのように、まずはレースを完走して、そして少しでも多くのポイントを獲得することが最も重要なんだよ。僕らの目標は年間チャンピオンを獲得することと、いつも成長を味わえる24時間レースで勝つことなんだ。冬の間にチームが行ってくれたエンジンや電気系統の改修が実を結んでくれて、今はスターターモーター改善に尽力していてくれるんだ。良くなっているよ。(ルマンでは)スタートを失敗し、ピットストップのたびに5秒を失ったからね。27回のピットストップで2分半分のタイムロスをして、1周未満の差で優勝を逃したけど、このレースを完走できたことは勝利したのと同じだと思っているよ。」
マーカス・ライターバーガー選手、ドイツ(BMW Motorrad World Endurance Team、BMW M1000RR)
「スパに来ることはいつも特別なことなんだ。特にコースが変わったことでターマックパートがとても良くなり、とても気に入っている。グリップがすごく良くて、段差がなくて安定している。改修工事は成功したね。ヴェルナー監督(ベルギー出身)がいつもスパに行くべきだと言っていて、2年前にようやく実現したんだ。彼はコースを案内してくれたんだけど、2周したところでマシンが壊れてしまって、自分たちだけで適応する必要があったんだよ。彼はザビエル(シメオン選手)の前のレコードホルダーだったからね。スパは我々にとって良い場所なんだ。ルマンではエンジントラブルで悔しい思いをしたし、スパではもっといいレースができるとおもっているよ。テストでは良いタイムも出せたし、レースに向けていい感じで進めることができているよ。」
ザビエル・シメオン選手、ベルギー(Yoshimura SERT Motul、スズキ GSX-R1000R)
「このコースはすごく魅力的なサーキットなんだけど、超高速サーキットなんだ。高い集中力とマシンへの信頼が必要だから、とても神経を使うサーキットだと思うよ。特に夜間は、とてもハードなレースになるだろうね。ラップタイムで大きな差が出るコースだから、本当にこのコースをよく理解しなければならないんだよ。でも、だからこそ、誰もが世界で最も美しいコースだって言うんだよ。森の中に長いコーナーがあって、7㎞も続くんだ。コースは本当に素晴らしいんだよ。2005年と2006年にスパでレースをしたんだけど、天気はこんな感じで、いつだってコロコロ変わるんだ。コース終盤では雨が降っていても、序盤の方では降っていないなんてこともあるんだ。だから、このコースをよく理解しないといけないんだ。
ダンロップ・スーパーストック・トロフィー参戦ライダー達のコメント
ケビン・マンフレディ選手、イタリア(Wójcik Racing Team STK 777、ヤマハ YZF-R1)
「スパほど素晴らしいコースはないよ。このコースは他のコースとは似て非なるものだね。まるでジェットコースターみたいで、とても速いんだ。(シーズン開幕前のテストで)MotoEでクラッシュしたけど、今は大丈夫。体にまだちょっと痛みがあるんだけど、問題はないよ。ルマンでは、初日の転倒で、肋骨を骨折してしまった。それまでは大丈夫だったんだ。レースは5時間で終わってしまったから、結果としては良かったとは言えないけど、最初の1時間では、いいスタートを切って、スーパーストッククラスの中では速いスピードで走らせることができていたからね。。」
フィリップ・スタインマイヤー選手、オーストリア(Team 18 Sapeurs Pompiers CMS Motostore、ヤマハ YZF-R1)
「このコースはとても素晴らしい。気に入ったよ。ここにはたくさんの特別なコーナーがあって、初めてオー・ルージュを走ったとき、本当に特別なコーナーで驚いたよ。ハードなレースになるだろうし、僕たちのマシンはホンダに比べるとパワー不足だから、レースはどうなるか想像もつかないよ。コーナリングスピードがとても速いから、もっとアグレッシブに攻めようとするとうまくいかない。ここがキーポイントになるね。」
暫定レーススケジュール
FIM EWCの主なレーススケジュールは以下の通りだ(日時はCEST)。
6月1日(水)
16:00-17:00:パレード(スパ・フランコルシャン・サーキットからマルメディへ
17:00-19:00:サイン会
20:00:パレード(マルメディ~スパ・フランコルシャン・サーキット)
6月2日(木)
10:00-12:00:フリー走行
15:40-16:00:公式予選1回目(ブルーライダー)
16:10-16:30:公式予選1回目(イエローライダー)
16:40-17:00:公式予選1回目(レッドライダー)
17:10-17:30:公式予選1回目(グリーンライダー)
21:40-00:00:夜間練習走行
6月3日(金)
11:25-11:45:公式予選2回目(ブルーライダー)
11:55-12:15:公式予選2回目(イエローライダー)
12:25-12:45:公式予選2回目(レッドライダー)
12:55-13:15:公式予選2回目(グリーンライダー)
17:00-19:00:ピットレーンウォーク
6月4日(土)
09:00-09:45:ウォームアップ走行
13:00:スパ24時間EWCレース決勝スタート
6月5日(日)
13:00:スパ24時間EWCレース決勝終了
13:05:表彰式
ライブタイミングと結果
EWCの結果:
https://www.its-results.com/ewc/2022/8b4e8660-2baa-4b09-9fc3-73d95f4e101e
EWCのライブタイミング:
https://www.its-live.net/#/live/ewc/2022/24hspa
第1戦終了後の暫定順位:
第1戦終了後のFIM EWC暫定ランキングはこちら。
最終エントリーリスト
最終的なエントリーリストは、レース直前にFIMEWC.comで公開される予定。