EWC 2022 レビュー:フランスで生まれた日本の喜び、YOSHIMURA SERT MOTULがルマン24時間レース優勝
Yoshimura SERT Motulは、2022年4月16から17日に行われたルマン24時間レースで2連覇を達成し、FIM世界耐久選手権タイトルの防衛を華々しく開始した。
2年間の新型コロナウイルス感染症の規制が行われた後、合計62000人の観客を集めたこの第45回大会で、グレッグ・ブラック選手、シルバン・ギュントーリ選手、ザビエル・シメオン選手の3人のライダーは、ルマンを拠点とするチームの一員として優勝に貢献した。
このトリオは常に速く、安定しており、完璧なチームワークでその力を遺憾なく発揮した。唯一の不安は、土曜日の午後、セーフティカーが入った際にブリヂストン装着のスズキGSXR-1000が燃料切れを起こしたことくらいだった。
しかし、それ以外では、Yoshimura SERT Motulのプロ意識と24時間にわたる入念な準備、そしてピットレーンなど、ボランティアを中心としたスタッフのたゆまぬ努力が至る所で見られ、その結果もそれを反映したものでもあった。
3月のルマン事前テストでかかとを骨折していたにもかかわらず、伝統のルマン式スタートで素晴らしい活躍を見せたイギリス生まれのフランス人ライダー、グレッグ・ブラック選手は、「信じられないような勝利だよ。去年よりずっと大変だったよ。」と語った。「他のチームもとても速かったから、僕たちは24時間を通して、プッシュし続けなければならなかったんだ。ペースは本当に速かったよ。チームメイトも素晴らしい仕事をしてくれたからね。本当にうれしいし、誇りに思うよ。」
Yoshimura SERT Motulの加藤陽平監督は、次のように語った。「昨年はルマン24時間レースとボルドール24時間レースで優勝したけど、今年は24時間レースが3つある。マシンの開発からチームワークまで、24時間レースをベースに取り組んできたから、今回の優勝で、チーム、マシン、ライダーにとても満足しているんだ。」
YART – Yamaha Official Team EWCは、金曜日の予選2回目でカレル・ハニカ選手がラップレコードを更新し、3年連続のポールポジションでEWC開幕戦に臨んだ。しかし、スタートでヤマハ YZF-R1のエンジンがかからないというハプニングが発生。チェコ人ライダー のカレル選手は、チームメイトのニッコロ・カネパ選手、マービン・フリッツ選手とともに果敢に攻め続け、2位でチェッカーを受けた。しかし、スタート時の問題はレース中も障害となったようだ。
マイク・ディ・メリオ選手、ジョシュ・フック選手、ジノ・レイ選手のライダートリオを擁するF.C.C. TSR Honda Franceは、8時間後に一時トップに立ったが、壊れたギアシフターとサイレンサーの交換のためにピットストップを行い、すぐに後退してしまった。さらに、ライドスルーペナルティを受け、日曜日の朝には新加入のジノ選手が転倒してしまい、ホンダ CBR1000RR-Rをピットに戻し、修理を行った。これにより、F.C.C. TSR Honda Franceは、一時表彰台圏内から外れたが、その後すぐにそのポジションを取り戻した。
最高位3位まで浮上したフランスのチーム、Viltaïs Racing Igolは、プライベートチーム勢のトップとして4位を走行していたが、技術的なトラブルにより残念ながらリタイアとなった。
市販車ベースのヤマハマシンでダンロップ・スーパーストック・トロフィーのポールポジションからスタートを切ったTeam 18 Sapeurs Pompiers CMS Motostoreは、オイルフィルターの破損による遅れを取り戻し、総合4位を獲得した。しかし、BMRT 3D Maxxess Nevers、National Motos、No Limits Motor Team、Team 33 Louit April Motoの上位3チームが接戦を繰り広げるという展開になり、このチーム達がカテゴリーの上位を占めた。このレースは、小規模で資金力のないチームによって争われるダンロップ・スーパーストック・トロフィーの究極の宣伝となった。
No Limits Motor Teamは、終盤、National Motosと33Louit April Motoと激戦を繰り広げたが、最終的にはこの2チームを抑え、ダンロップ・スーパーストック・トロフィーで2位、総合で5位を獲得。カワサキマシンを擁するフォーミュラEWCチームのTeam Bolliger Switzerlandが8位、それに続き、Pitlane EnduranceとTeam LH Racingがトップ10に名を連ねる結果となった。
レース開始から7時間経過後、ERC Endurance Ducatiのシャビ・フォレス選手がバックマーカーをかわす際に転倒し、長時間のピットストップを余儀なくされ、11位に留まった。
Wójcik Racing Teamは、マシントラブルと転倒により、ヤマハマシン#77をリタイアさせざるを得なかった。BMW Motorrad World Endurance Teamは、ラジエーターに穴が開くというトラブルに見舞われ、表彰台獲得という夢は消えていった。
Webike SRC Kawasaki Franceは、途中まで表彰台獲得への希望を残していたが、夜間に1時間以上のピット作業を余儀なくされ、その望みは絶たれた。
レースは、クリストフ・シーニュがブラッドリー・スミスとの衝突を避けられず、劇的な幕開けとなった。土曜日のレース開始直後、クリストファー・セニョール選手と動きが鈍ったブラッドリー・スミス選手が接触するなど、劇的なスタートとなった。クリストファー選手は歩いてピットに戻ったが、元MotoGPライダーのブラッドリー選手は、後部に大きな衝撃を受けたため、セーフティカーが導入された際に、コース脇ですぐに応急措置を受け、精密検査を受けるため、そのまま病院に搬送された。ブラッドリー選手に大きな怪我はなかったが、しばらくは病院で様子を見ることになった。ブラッドリー選手が所属していたMOTO AINは、懸命にダメージの修復に努めたが、復帰後のヤマハマシンは完璧なコンデションではなく、また、24時間をフルに走れるライダーが2人だけになったため、撤退という厳しい決断を下すことになった。
ライダーのコメント
フォーミュラEWC、シルバン・ギュントーリ選手(Yoshimura SERT Motul): 「素晴らしいレースだったね。ライバルたちのペースも速くて、ずっと攻め続けなければならなかったから、今回本当に疲れたよ。24時間、常にフルスピードで、僅差でレースをコントロールしなければならなかったけど、なんとかこの大きなトロフィーを持って帰ることが来たよ。耐久レースはチームスポーツ。技術面でもチームメイトのみんながいなければ、何も達成できないんだ。だから、このチームの一員であることはとてもラッキーなことだと思っているよ。僕たちはよくやって退けたし、この状態を持続させたいよね。」
ダンロップ・スーパーストック・トロフィー:フィリップ・スタインマイヤー選手(Team 18 Sapeurs Pompiers CMS Motostore): 「本当にうれしいよ。夢が叶った感じで、チームのみんなも本当によく頑張ってくれたよ。ピット作業も速かったし、チームメイトもとても速くて、夜に失ったタイムを取り戻すことができた。今までで一番厳しいレースで、本当に大変だったけれど、優勝できて本当にうれしいよ。」